PACIFIC WAY

パラオ短信
  新政権の体制〜進む組閣    

上原伸一(うえはら しんいち)


 本誌前号「パラオ新政権スタート」にて新政権の体制のレポートをしたが、その後の状況について簡単に報告をする。
 
○行政府
 閣僚に関しては、8人全員の指名が終わった。副大統領サンドラ・ピエラントッチ氏が兼務する厚生大臣は、上院の承認が不要のため既に確定していた。その後、行政大臣エルブール・サダン氏、司法大臣マイケル・ローゼンタール氏、社会文化大臣アレキサンダー・メレップ氏、資源開発大臣に土地調査局長のフリッツ・コシバ氏が上院の承認を得て就任した。又、前大統領府官房長官テミー・シュマル氏も2回目で国務大臣に承認された。残りの2閣僚に関しては、教育大臣にパラオ・コミュニティカレッジの臨時学長マリオ・カトサン氏、商業貿易大臣にはパラオ国立開発銀行で副頭取を務めた後、グアムの太平洋諸島開発銀行頭取を務めていたオトイチ・ベセベス氏が指名され、上院の承認を待っている。これらの人事を見ると、就任早々“小さな政府”の実現を唱えた新大統領としては手堅い実務型のチーム編成を目指しているのが良く分かる。
 ちなみに、レメンゲソウ新大統領は2月末、2001年度の統一予算にサインした。昨年度に比べ、約25%減の5900万ドルと予算面でも“小さな政府”の実現に取り組んでいる。
 
○上院 
 昨年の総選挙で5位で“当選”した前司法大臣カムセック・チン氏に対し、被選挙人資格を巡って疑義が提出された問題はまだ決着がつかず、上院9議席の内1議席が宙に浮いたままになっている。この問題は、少々複雑な展開を見せているので、整理の為に前号でリポートした部分も含めて改めて初めからの状況を説明する。
 パラオ憲法第9条6項では、国会議員になる資格として「選挙に先立って(直前に)5年以上パラオに居住していること」を求めている。チン氏は、長い間アメリカで軍の将校を務めていた。1997年にナカムラ前大統領により司法大臣に指名されたが、パラオに帰国したのはその少し前であった。そこで、チン氏はぎりぎり選挙直前5年間の居住という議員資格を満たしていなかった可能性がある。この問題は、最初選挙管理委員会に対して提起されたが、選挙管理委員会は問題無しとして選挙結果を確定・公認した。これを不服とし12月5日に最高裁審理部に“チン氏の議員資格無効”の提訴が起こされた(パラオでは中央政府又は州政府が当事者の一方である事件の第一審の管轄は最高裁審理部と憲法で規定されている)。

 これに対し、チン氏は「私はパラオで生まれたパラオ市民であり、アメリカの市民権を得たことも無い。居住の条件も満たしている」と反論し、12月18日に議員資格有効確認を求めて提訴した。
 12月末に最高裁審理部は、「憲法第9条10項の規定により、上院議員の資格を判断出来るのは上院だけである」として、“チン氏の議員資格無効”提訴を棄却した。これにより、問題の舞台は上院に移った。上院資格委員会で検討が行われ、チン氏に対し自らの主張を裏付ける証拠を提出するように求めた。今年に入っても決着が着かないため、上院は1議席が確定しないまま、8人のメンバーで運営されている。2月15日には、チン氏の議員資格有効確認に対する最高裁の判断が出た。判決は、「チン氏はアメリカ市民であったことはなく、正当にパラオの市民権を持ち続けていた。又、継続的にパラオに住居を有し、メイドを雇い具体的な指示もしており、物理的に他の土地に居る期間があったとしても実質的な居住の条件は満たしている」と全面的にチン氏の言い分を認めた。
 これに対し上院サイドは、“まだ控訴の可能性もある”、“チン氏は上院の要求している資格証明を提出していない”等の理由で上院本会議及び資格委員会共にチン氏の議員資格を認めないままに論争が続いて来た。3月末にセイト・アンドレス上院議長は、上院資格委員会の論議を踏まえて上院の見解を発表した。そこでは、@上院での憲法解釈では、“選挙直前5年以上の居住”というのは、恒常的なベースとしてパラオに物理的に居たということを意味しており、その点でチン氏の被選挙人資格には疑問がある、Aアメリカの市民権を有していない証明を求める上院に対し、チン氏は在パラオ・アメリカ臨時代理大使の手紙を提出しているのみで、アメリカの公式機関の正式な証明書は無く、又上院がアメリカ政府に対しチン氏の市民権の照会をするのに必要な同意書を提出していない、の2点が大きな問題として取り上げられていた。
 4月2日最高裁控訴部は、居住性の点に関してチン氏は被選挙人資格を完全に満たしている旨の最終判断を下した。これを受けて上院はチン氏に対し、氏のアメリカ市民権問題に決着をつけるため、アメリカ政府の公式証明書か、アメリカ政府に上院が公式照会をするために必要なチン氏の同意書のどちらかを提出するよう求めることにした。パラオ国内では、チン氏の議員就任を求める声が高まっており、アンドレス上院議長も「この問題は政治的な問題ではない。チン氏が同意書を提出することによって早く解決することを望む。」と語っている
 
○下院
 下院では議長選出を巡って対立が続き8対8の膠着状態のまま、予算審議を除きその他の法案審議が全てストップしていた。2カ月間の報酬返還訴訟準備が行われる等国民の非難が高まる中、3月7日にそれまでオウグスチン・メセブル氏(マルキヨク選出)を支持していたジョエル・トリビューン氏(コロール選出)とアントニオ・ベル氏(ガラルド選出)がマリオ・ギルバート氏(アンガウル選出)支持に変わり、10対6の勢力構造になったために決着がついた。議長はマリオ・ギルバート氏、副議長にジョエル・トリビューン氏、院内総務にケライ・マリウル氏(アルコロン選出)が就任した。全ての委員会で議長派が委員長を占め、メセブル氏のグループはポスト争いで全面的に敗北した。これにより下院は正常化され急ピッチで法案審議が進められている。
 
           

(本稿は現地4月15日段階の情報に基づいています)